計算しない数学、計算する数学
計算しない数学、計算する数学 ~ホントの数学は自分の中にある (知りたい!サイエンス)
- 作者: 根上生也/桜井進
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2007/09/29
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「計算しない数学」とは、根上先生が提唱している「原理や構造に注目して論証する」数学。離散数学や論理パズル、パターン発見のようなもの。数学の研究に携わる人なら、ある段階からはあまり計算はしなくなり、構造の理解や現象の観察が数学的な活動の大半を占めると思うのだけれど、それを社会に数学の魅力を広めるために教育などの現場に取り入れようとする立場。もう一方は計算することによって数学の美しい世界が見えるのだという立場。学生時代に計算でつまづいた人たちに、計算をナビゲートして数学を楽しんでもらおうというやり方。
対立しているように書いているが、手段が若干異なるだけで、根底にある数学の面白さ、美しさを伝えたいという熱意は同じ。かなりの部分が教育論になってしまっているところは残念だけど、世間一般に膾炙している数学ができる人=計算が速い人という誤った理解を正そうとする話は形を変えて何度も出てくるので、それだけでも伝わったのなら目的は達したことになるのかな。
- 光速や電子の質量などの物理定数は宇宙をデザインする神様が変われば変わるかもしれないが、円周率は神様でも変えられない
- 日本語は数を表すのに例外なく10進数で発音しているので、欧米の言語よりも有利
などの対談中のエピソードも面白い。
「『超』勉強法」での「数学は暗記科目だ」という記述に憤慨しているけれど、他の受験生向けの勉強法の本にも同様のことが書いてあることが多い。数学の専門家の側から、(個人的な憤慨はあっても)この点に対してはっきりとした反論がなされていないようなのは残念。現場の教育に携わる人は暗記科目だと思って教えているのかもしれないけど。
私個人の立場としては、得意じゃない人に教えるときは「計算する数学」、自分でやるときは「計算しない数学」かな。