貧困の終焉
- 作者: ジェフリーサックス,Jeffrey D. Sachs,鈴木主税,野中邦子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/04
- メディア: 単行本
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題名からは慈善活動とか人道支援のようなことを想像するかもしれないが、中身は開発経済学、著者の言葉を借りると臨床経済学、の本である。著者のジェフリー・サックスは若くしてハーバード大学の教授となった経済学者。途上国政府のアドバイザーを歴任し、国連のミレニアムプロジェクトのトップを務めた人物でもある。
副題に「2025年までに世界を変える」なんてついているが、本を読むまでは、夢物語か、運動のためのキャッチフレーズか、としか思っていなかったけれど、読み終えると、我々の世代が世界全体で協力して取り組めば不可能ではないと思わせる。
貧困をなくすとは、貧富の差をゼロにするというユートピア的な発想ではなくて、極貧にあえぐ国に、発展のためのはしごの一番下の段に足をかけさせるには何をすればいいのか、ということ。そして、そのことが先進国にとってどのような意味を持つかということについて論じている。理論的な話だけではなく、ボリビア、ポーランド、ロシアなどで著者が関わってきた経済政策、それを実行に移すための為政者や国際機関との交渉、など具体的な話が多いことも説得力がある。貧困をなくすための「魔法の銃弾」はなく、広範囲な投資のパッケージが必要であること、一部の国だけが安定と反映を保つのは不可能であること、貧困をなくすためのドナー国が負担すべき投資額はどれくらいか試算していること、などはアメリカ政府や国際機関へのメッセージの意味も強いのだろうと思う。
ボリビアのハイパーインフレがどのように終焉したのか、インドがどうして高成長国家となったのか、の話が特に面白かったです。