超・学歴社会
- 作者: 溝上憲文
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2005/04/22
- メディア: 単行本
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就職市場で「人物重視」「学歴不問」の求人が増えていると言う。この本は企業の人事部への取材と、企業の就職実績のデータから、学歴がどのように採用や出世に影響しているのかをあぶりだしたもの。丹念な調査と取材に基づいたレポート。面白い。
最初に有名企業の有名大学卒業者の採用比率が上がっていることを指摘し、学歴不問の求人の欺瞞性を暴いている。大学入試や就職試験における「自由競争の正当性が社会的不平等を隠蔽している」という指摘は鋭い。
明治以降の日本における学歴と採用の関係の歴史をざっと触れた後、終身雇用制度が崩壊し、インターネットを使った就職活動が普通になった現在の企業の採用プロセスの解説。巷にありがちな学生向けの就職マニュアルと違い、人事部の本音をうまく引き出していて興味深い。人事部は優秀な人間をどれだけ入社させたかが評価になるということと、人材の仕事における優秀さと学歴には相関があるということは、当たり前なのだから、学歴でフィルタリングするのは普通のことのように思える。
最終章では近未来の予測として、日本は学歴によって所属する階層が明確に規定されてしまう「超・学歴社会」になるとしている。入学時の「地頭」のよさと育ってきた環境を測る尺度としては、学歴が有意である、ということ。序列の低い大学が優秀な人材を供給するのであれば、それは序列が崩れるのではなくて、そういう大学の序列が上がることを意味して学歴社会自体は変わらないという。
主張はどれも過激なものではなく、むしろ論理的には自然なものだと感じた。メディアが作り出す雰囲気のために言いにくくなっている企業側の本音をうまく引き出したな、と思ったのでした。これから就職活動をする学生が「就職活動教」に洗脳される前に読んでおくといいんじゃないかな。
いくつか読みながら感じた問題意識をメモ。
- 学歴を否定しているマスメディアは、教育システムによる評価を信用していないのだろうか?その一方で教育の重要性を語るのは矛盾していないか?
- 現在の日本で教育にかけるコストは正当なのかどうか、それだけの価値があるのかどうか
- 企業の「能力主義」「即戦力重視」といった建前のメッセージにより、大学教育が歪んではいないか?就職側と採用側のマッチングのギャップを拡大する方向に働いていないか?
- MBAや社会人大学院は企業側の受け皿が整っていないのに、修了者を無駄に大量輩出していないか?