宇宙太陽光発電に挑む
NHKサイエンスZERO 宇宙太陽光発電に挑む (NHKサイエンスZERO)
- 作者: NHK「サイエンスZERO」取材班,佐々木進
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2011/06/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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夢物語として「宇宙太陽光発電」という言葉は知っていたけれど、実際にどこまで研究が進んでいるのかを確かめるために読む。
素人でも気になるのは、どのように宇宙空間に発電所を作るのか、どうやって電気を送るのか、どれくらいの出力が期待できるのか、だと思う。それぞれの疑問点について、まだまだ道半ばの技術もあるが、現状どこまでできていて、どういう構想があるのかを説明してくれている。簡単に要約しよう。
1968年にグレーザー博士がソーラー・パワー・サテライトというアイディアを提唱し、ここで基本的な枠組みは考えられている。時代背景としてはアポロ計画の次のテーマとして考えられたようだが、組み立てコスト(まだスペースシャトルのような再利用可能なロケットも組み立て用のロボットもなかったので)が膨大で打ち切りになったとか。その後オイルショックや温室効果ガス削減問題などから90年代後半から再び注目されるようになったそうである。
送電方式はマイクロ波を使うものと、レーザーを使うものなどがある。マイクロ波は電子レンジと同じ原理で、直進性と透過性がよいためによく研究されている。レーザーを使うものは、アンテナを小さくできるメリットと、減衰が大きいというデメリットがある。
発電所のどこに作るかは、静止衛星軌道にすれば一定の場所に送電するのが楽だが、高度が高いため組み立てと受電装置のコストが高いのが問題である。一方、低い高度で赤道を周回させる場合は、受電設備がたくさん必要になる。太陽を追尾するのに、鏡で集光するタイプと、パネルを回転させるタイプがある。宇宙空間で発電をする場合は、宇宙線や宇宙塵の影響も考慮しなければならない。
太陽光発電の出力や、マイクロ波の送電量については、目標としている値と1万倍以上の隔たりがあり、技術的にはまだまだ解決しなければならないことが多いが、ロードマップでは2035年に実用一号機を完成させるということになっている。
TVの内容を本にしただけのものなら、あまり期待できないなあと思っていたのだが、いい意味で裏切られた。