tkenichi の日記

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2100年の科学ライフ

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2100年の科学ライフ

2100年の科学ライフ


物理学者の視点で100年後の世界を予測するとどうなるか。
いわゆる未来学者や経済学者の予想だと、どうしても現在の進歩をそのまま延長して線形的に予測してしまいがちであるが、ここでは指数的な進化や非線形的な進化をすると思われるものや、テクノロジーの進化に物理法則による限界が存在するものを考慮に入れているところが面白い。特によく出てくるのが半導体に関するムーアの法則で、これによってチップ(≒計算能力)が指数的に増大することで得られる世界像を予想しつつ、量子力学的な限界からいつまでも続くことではないことも言及している。

また、どんなに技術的には可能であっても人間がそれを選択しない場合があることについても述べられている。それは「穴居人の原理」という形で示されていて、獲物の証拠を求めたり、直接会いたがったりすることが、10万年以上前から人類がずっと持ち続けている特質であるとした。いままでの技術もこの原理に合うものが受け入れられてきたし、これからもそうだろう、という著者の視点は斬新で非常に面白かった。予測されているテクノロジーの一つ一つはすでに研究室レベルでは実現されているものも多いが、それが実現するかどうかはこの原理、そして社会が投入できるコストに依存するとのこと。

20年後ぐらいまでの近未来、2070年ごろまで、そして2100年ごろ、と3段階に分けて予測していて、2100年の時点での予測にいたるまでの経緯がわかるようになっている。近未来はほぼ線形で近似できる予測、その後に進化に限界があるものや、ブレイクスルーがおきるものや、目指す方向性が変わるもの、などがあってその結果として見えてくる2100年の世界にわくわくする。

扱っているテーマは、コンピュータ、人工知能、医療、ナノテクノロジー、エネルギー、宇宙旅行、そして富。個人的に面白かったのは、原子レベルの物質のデザインができるようになって、100年後には何でも作ることができるレプリケーターが実現するという予想と、エネルギーは磁気の時代になって移動に関するコストが大幅に縮小するという予想。ぜひ実現していてほしいし、その世界を体験してみたい。

どこまで予測が当たるのかわからないが、5年後、10年後に読み返してみたい本だ。